放課後は、秘密の時間…
教室を出ると、市川君はあたしの隣を歩き出した。


「じゃ、行きましょう」

「市川君も呼ばれてるの?」

「はい。手伝ってほしいことがあるから、二宮先生と一緒に来いって」


う~ん……なんだろ?


あたし一人が呼び出されるのはいつものことだけど、生徒と一緒なんて初めて。

手伝いって、美術室の掃除とか用具の整理とかかな……


係も大変よね。

放課後まで仕事しなきゃいけないなんて。


美術係なんて、一番仕事が少なさそうな係なのに……



――にしても。


市川君、背高いなー……175cmくらい?

何を食べたら、こんなに大きくなれるんだろ?


身長が低いあたしは、彼と話してると自然と見上げる形になっちゃう。


「先生?どうかした?」

「え?あ、ううん、何でもないの。ごめんね」


いけない、ジロジロ見ちゃった。


でも、市川君ってほんと、最近の高校生って感じ。

髪だって脱色してるのか少し茶色いし、学ランのホックとYシャツのボタンは外して着崩してる。


時折風に運ばれてあたしの鼻をくすぐっていく、薄くて甘い香り。

それもきっと、市川君がつけてる香水のものなんだろうな。

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