放課後は、秘密の時間…
言葉につまったあたしの代わりに、市川君が呟いた。

それは、あたしに話しているというよりは、独り言みたいな響きだった。


「……先生のせいだから」

「え?――なっ…市川君っ!?」


腕がきしむくらいの強い力で握りしめられたことに気がついた時には、市川君はもう次の行動に動いていた。


「いやっ……んんっ……」


抵抗らしい抵抗もできないまま、強引で激しいキスが落ちてきて。

頭が、一瞬で真っ白になる。


なんなの、これっ……

怖い。


何でこんなこと急に?


苦しくて口を開けようとしても、市川君はそれすら許してくれなくて。

彼の唇に塞がれたまま、あたしはまともに呼吸さえできない。


突然唇を咬まれて、鈍い痛みが走った。


「先生のせいだよ?」

「……何言って……」

「先生が悪いんだ」


頭の中に、警報みたいな心臓の音が聞こえてくる。


「あんな顔、俺には見せたことないくせに」

「何のこ……っ……」


もう一度深く口付けられて、あたしの言葉はただのうめき声に変わった。

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