放課後は、秘密の時間…
吐息混じりの声を残して、市川君があたしの首筋に顔を埋めた。


ダークブラウンの髪が顎の辺りに触れる。

彼が動くたびに、柔らかいそれがくすぐったくて。


だけど、そう感じるのは、ほんの一瞬のことだった。


「……ぃっ……」


市川君が唇を寄せたところに、ざらりとした感触と痛みが走る。

歯形を残すように強く吸われる――そんな痛み。


「ねぇ、こんな痕なんか見せたら、先生の彼はなんて言うかな?」


顔を上げた市川君は、指で首筋を撫でた。


「先生、また増えたね?先生と俺だけの秘密」


あたしは信じられない気持ちで市川君を見つめた。


首筋に残された「痕」なんて……


「先生、肌白いから。キスマーク、目立つよ」


ひど…い……

どうして、キスマークなんか……


「これでこの痕が消えるまで、あいつの前で服は脱げない」


市川君が今触れているところにできた、赤い痕。

それは鎖骨に近い場所だし、よっぽど襟の開いた服を着ない限り、誰かに見られる心配はないと思う。


……でも、大也と会うときは――


「そんな目で睨まないで。これから、もっと睨まれるようなことするんだから」

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