放課後は、秘密の時間…
言葉を言い終わらないうちに、市川君はあたしのスーツのボタンを外し始めた。


「いやぁ……んん……」

「声出さないでよ、先生」


深いキスは、あたしの頭を真っ白にしてしまう。


いやだって言いたいのに、彼を押しのけたいのに。

何もかもがわからなくなってくる。


市川君の制服から漂う甘い香りがあたしを包んで。

彼の息遣いさえ、やけにリアルに聞こえる。


それぐらい密着してるっていう現実が、あたしの心臓をものすごい速さで動かしていた。


市川君はスーツの上着を広げると、荒々しい手つきのまま、シャツの一番上のボタンへと手を伸ばした。


「んんっ!!」

「暴れないで」


「いやっ」て言ったつもりの言葉は、くぐもった声として響くだけ。

市川君と机の間に挟まれたあたしの身体は、少しも自由にならない。


「抵抗したって無駄だよ。絶対逃がさない」


いや……

怖い。


こんなの、悪い夢だって思いたい。


いつもみたいな、イジワルなんかじゃない。

市川君は本気で、本気であたしのこと……


――いやっ……!

< 69 / 344 >

この作品をシェア

pagetop