放課後は、秘密の時間…
今すぐに放してほしい。


だって、そうじゃなきゃ……


こんなところ見られでもしたら、何の言い訳もできないよ。

首筋にキスマークがついてるなら、なおさら……


「こんだけ強ぇ雨じゃ、明日もグラウンド使えねぇかもなぁ」

「ってことは明日も校内ランニングっスか!?」

「そういうことになるな。――おい、各自でストレッチしとけー!」



べつに、珍しいことなんかじゃない。


野球部やサッカー部みたいに外で練習してる部は、天気が悪い日なんかは、校内でトレーニングしてる。

美術室の前の廊下は、サッカー部が校内ランニングを終えたあとにストレッチをする場所になっているらしく、あたしも雨が降った日は彼らをよく見かけてた。


きっと今日も……

話の内容からして、突然の雨に、校内トレーニングに練習メニューを変えたんだと思う。


それで、生徒達はいつもの場所にストレッチをしに来ただけ。


でも。

いつも通りなんかじゃない。


美術室だけは、いつもと違う。

中にいる、あたしと市川君だけは……


彼らにこんなところを見られたら……

あたしは、大学を退学どころじゃ済まされないかもしれない。


市川君にだって、きっと何かの処分が与えられる。

それに十分気がついてるはずなのに、彼はクッと楽しそうに笑った。

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