放課後は、秘密の時間…
一度言葉を切ってから、


「それでも先生のこと好きになったんだから、仕方ねぇじゃん。どうしようもないんだよっ……」


吐き出すように言って、市川君はあたしから視線を逸らした。


「俺だって先生に嫌われるようなことしたくねぇけど、」

「じゃあやめてよ、放してっ……」

「先生っ!」

「これ以上なんかしたら、本気で嫌いになるから」

「……センセ……」

「お願い、放して」

「……ズルイよ、先生」


あたしを押さえつけていた彼の手が、そっと離れていく。


「嫌いになるなんて言われたら、俺、何にもできねーじゃん……」


俯いて立ったまま、市川君は、大きなため息を吐いた。


好きにさせてみせるなんて強気な言葉を言ったかと思うと、急にこんな風に弱気になったり……


胸の中に、戸惑いが生まれてくる。

さっきまで、あんなにひどいことをされてたのに、今は……


あたしが彼に何か声をかけようとした、そのとき、


「なぁ、今なんか聞こえなかった?」

「え~空耳じゃないっスか?」


廊下から男子生徒の声が聞こえた。

市川君がはっとした顔であたしを見る。

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