放課後は、秘密の時間…
「空耳じゃねぇって。美術室の中からなんか音?しなかったか?」

「でも電気ついてないっスよ」

「うーん、だよなぁ。誰もいねぇよなぁ」

「気になるんなら、戸、開けてみたらどうスか?」


自分の心臓の音が、こんなにリアルに聞こえたのは、初めてかもしれない。


どうにかしないと……


そう思ってるのに、あたしの身体は緊張でピクリとも動かない。

呼吸の音なんて聞こえるはずもないのに、その瞬間、あたしは息さえも止めてた。


「先生、こっち」


小さな声と一緒に、腕を思いきり引っ張られて。

あたしは、市川君の胸の中に倒れこんだ。


すぐに、視界が真っ暗になる。


「ちょっと、市川君っ?」

「静かにして」


耳元で強く言われて、思わず口を閉じた。

同時に、すぐ近くでガラガラと音が響いて、


「あれ、やっぱ誰もいないっスね」


サッカー部の生徒が、美術室に入ったみたいだ。


「気のせいだったのかな?」

「先輩、幻聴っスか?老けるのはまだ早い、ってぇ!!」

「バカヤロー、生意気な口きくからだ」


あたしと市川君の今の心境とは、まるで正反対の声。

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