放課後は、秘密の時間…
「先輩?何もないっスよ。行きましょ」

「……あぁ、そうだな」

「やっぱ先輩、年とったんじゃ、ったいってば!蹴んないで下さいよ~」

「お前が生意気だからだ」


まるで漫才みたいに息の合った会話を残して、足音が遠のいていく。

ガラガラと戸が閉まる音がして、すぐあとに、


「今日の部活はここまでー解散~」


なんて、一際大きな声が響いた。

ロッカーの中に入ったままのあたし達にも、それは聞こえてくる。


バレて、ない……?

あの音、聞こえなかったってこと……?


心臓が口から飛び出すって、こんな気分のことをいうんだと思う。

だけど、あたしの口から飛び出しそうになったのは、もっと別のものだった。


あまりにも緊張したせいで、吐き気が込み上げてくる。


深呼吸しながら気分を沈めていると、


「先生、ちょっと離れて」


市川君がもぞもぞ動き出した。


「うん、待って。今出るから」


サッカー部の生徒の声が聞こえなくなったのを確認して。

ロッカーの扉を両手で押そうとした瞬間、腰に何か違和感を感じて、あたしは絶句した。


これって……

これって――!!

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