放課後は、秘密の時間…
「市川君、最低っ!」


狭くて暗いロッカーから飛び出すと、市川君が頭をガリガリ掻きながら言った。


「仕方ないじゃん。当たってたし」

「言わないで、そういうこと!」

「あんな狭い密室でくっついてたら、男なら誰だってこうなるよ」

「だか、だからって……」

「生理現象だろ」


顔中に血がのぼってる。

口をパクパクさせてるあたしに、市川君はしれっとした態度のままだ。


「健全な男子高校生って証拠だろ?むしろ、ならない方が異常だと俺は思うけどね」

「や、やめてよっ」

「このくらいで赤くなるなよなぁ。前から思ってたけど、先生さぁ、彼氏いるくせに純情すぎ」


それとこれとは、話が違う!


一気に緊張が緩んだせいか、あたしはそのままへなへなと崩れ落ちた。

そばに寄ってきた市川君が、そんなあたしを見下ろしてくすくす笑ってる。


「何がおかしいのよ……」

「べつに。先生、なんか顔疲れてるよ」

「……誰のせいよ……」

「うん、俺のせい?」

「わかってるんなら、ほうっといてよぉ」


今日一日で、あたしの寿命は確実に縮まった気がする。

時計を見ると、短針が6を指していた。


あんなに長く感じたのに、時間はそんなに経ってないんだ……

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