放課後は、秘密の時間…
――って、あれ?


「あげるよ、先生」


笑いをこらえながら、彼があたしの手の平にのせたものは、


「あ、飴っ!?」


可愛い包み紙の、小さなキャンディーが三つ。


……携帯電話じゃない。


「先生、飴好きそうだし」


もう我慢できない、という感じにプハッっと噴き出して、市川君は豪快に笑い出した。


これって……

もしかして、あたしの反応見て楽しんでた!?


「何先生、そんな顔して。もっとほしいの?」

「そんなわけないでしょっ!!」


信じられないっ……!

あたしがどんな気持ちになったと思って……


「じゃあセンセ。昼休み、学食でね」


ケラケラ笑いながら、市川君達は廊下を歩いていった。

残されたあたしの手には、ちょこんとのったままのキャンディー。


今のって絶対……市川君、あたしで遊んでたよね?

一人で勝手に焦ったあたしもあたしだけど……


なんか、悔しいっ!


あたしは、キャンディーをジャケットの右ポケットに押し込めて、職員室に向かった。

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