放課後は、秘密の時間…
隣の席に座るのも微妙だけど、市川君の真ん前ってもっと微妙じゃない?

顔をつき合わせてお昼を食べるってことでしょ?


拒否権なんてないのかな……

座んなきゃ、どうせまた写メで脅してくるに決まってるもん。


諦めてイスに腰かけると、市川君は頬杖をついて、あたしの顔をじっと見つめた。


「……何?」

「べつに」


べつに、なんて言いながら、その目はあたしを見たまま。


ちょっと。

そんなにずっと見られると、緊張してくるんだけど……


「ねぇ、あんまり見ないでくれる?」

「いいじゃん。減るもんじゃないし」

「そ、それはそうだけど……」

「先生さぁ、どうして俺が今日、学食で先生と会おうと思ったかわかる?」

「え?」


そういえば……

どうして、いつもみたいに放課後の美術室じゃなくて、昼休みの学食だったんだろう?


でも、市川君の考えることなんて、わかんないことだらけだよ。


「考えてみたら。俺さぁ、先生がメシ食うとこ、ちゃんと見たことないんだよね」

「はぁ……?」

「でも、当然だよな。先生、いつも職員室でメシ食ってるだろ?」

「うん?」


一体、市川君は何を言いたいんだろ?

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