放課後は、秘密の時間…
「――市川君っ!?」


武藤君の前で、なんてこと言うの!?


「え?拓真、先生の泣き顔見たことあんの?」

「さぁね」

「なんだよ、それ?あかりちゃん、泣いたの?」

「何であたしに振るのよっ?――知りません、そんなこと!」

「んだよ~また秘密かよぉ?」


途端に、市川君がまた笑い出して。

あたしは、何度も繰り返し問いかけてくる武藤君に、「知りません」の一点張りで通した。


心臓は、相変わらずドキドキいってる。


それが市川君に気づかれないよう、何度も深呼吸を繰り返したけど……

昼休みの間中、あたしの胸が落ち着くことはなかった。



この気持ちが、なんなのか……

どうして、彼の一言一言に、こんなに振り回されるのか。


本当は、気づき始めてる。

だけど、気づかないフリをしなきゃいけない。


だって、大也がいる。

大也だけが、あたしの好きな人だから。


今までも、これからも、ずっと。



そう自分に言い聞かせて、市川君のことを頭から振り払おうとしたけど……

あたしの心の中に芽生え始めたそれは、確かに、少しずつ大きくなっていたんだ。

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