放課後は、秘密の時間…
第七章 危機
廊下ですれ違うとき、決まって彼はあたしにささやく。
「放課後、美術室でね、先生」
何か言い返そうと振り返ると、そこにはもう甘い香りが残っているだけで……
あたしは、小さくなっていく彼の背中を、ただ見つめることしかできない。
ダメだってわかってるのに。
こんなこと、誰かに知られたら、きっと問題になるのに。
放課後になると、あたしは美術室に向かってしまうんだ……
――あれ以来……
市川君が、あたしを襲いかけて以来。
市川君は、そういうことをあたしにするのを、ぱったりとやめた。
抱きしめてきたりとか、キスしたりとか……
そんな風にあたしに触れることは、本当になくなったんだ。
ただ美術室にいて、時間を過ごすだけ。
あたしのことを聞いたり、自分のことを話したり。
時には何も言わずに、あたしのことをじっと見てる。
その視線に気づかないフリをするあたしに、市川君もやっぱり何も言わなくて。
時間だけが、静かに流れていく。
HR、休み時間、授業中にふと声をかけるとき……
「美術室に来ないで」って、断るための一言をいう時間は、いつだってあった。
だけど、どうしても言えなくて……
あの画像で脅されているわけでもないのに、あたしは彼を拒否することができずにいた。
「放課後、美術室でね、先生」
何か言い返そうと振り返ると、そこにはもう甘い香りが残っているだけで……
あたしは、小さくなっていく彼の背中を、ただ見つめることしかできない。
ダメだってわかってるのに。
こんなこと、誰かに知られたら、きっと問題になるのに。
放課後になると、あたしは美術室に向かってしまうんだ……
――あれ以来……
市川君が、あたしを襲いかけて以来。
市川君は、そういうことをあたしにするのを、ぱったりとやめた。
抱きしめてきたりとか、キスしたりとか……
そんな風にあたしに触れることは、本当になくなったんだ。
ただ美術室にいて、時間を過ごすだけ。
あたしのことを聞いたり、自分のことを話したり。
時には何も言わずに、あたしのことをじっと見てる。
その視線に気づかないフリをするあたしに、市川君もやっぱり何も言わなくて。
時間だけが、静かに流れていく。
HR、休み時間、授業中にふと声をかけるとき……
「美術室に来ないで」って、断るための一言をいう時間は、いつだってあった。
だけど、どうしても言えなくて……
あの画像で脅されているわけでもないのに、あたしは彼を拒否することができずにいた。