last.virgin
「…コレ、俺のデスクに入れたの、君だよね?」
遙はパソコンの画面を見つめたまま。
「…………はぃ…」
小さく返事をした。
俺はその封筒を再びポケットにしまい、遙の腕を引っ張って立ち上がらせた。
「…話があるんだけど、着いてきて」
「…………はぃ…」
「上の会議室、行こうか?」
彼女がコクリと頷くのを確認してから、オフィスを出て階段で六階の会議室へと向かった。
昼休みの会議室だったら誰も居ないし、邪魔されず彼女ともちゃんと話す事が出来るだろう。
ドアの前に立ち一応確認の為にノックしてからドアを開ける。
当たり前だが誰も居ない。
遙を促し中に入り、後ろ手にドアを閉めると、彼女はガバッと身体をくの字に曲げて。
「すみませんっ!シーツを汚してしまって!1万円じゃ足りないですよね?でもっ、今私、お金が無くて、明後日の給料日には全額弁償します!ホントにごめんなさいっ!」
「は?」
「もしかして何十万とかするんですか?それならいっぺんには無理だけど、分割払いでもいいでしょうかっ?!」
「はあ?」
彼女の検討違いな勢いに圧倒されてしまった。
「分割がダメなら…消費者金融でお金借りて…」
「いやいやいや!ちょっと待って!」
止まる事を知らない彼女の暴走を、取り合えず落ち着かせるのが先のようだ。
俺は彼女の肩を掴み、その身体を真っ直ぐに立たせた。
「取り合えず落ち着こうか?はい、深呼吸して?」
彼女は言われるがままに、スーハースーハーと深呼吸をして。
何故か俺もつられて、スーハーしてしまった。
……ホントに調子が狂う娘だな…