last.virgin
一先ずラーメンを箱に戻し電話に出る。
「…はい。和久井君?」
『おう。お疲れ、もう帰って来とるん?』
「うん、さっき帰ってきたとこ、なんしたと?」
『遙、晩飯まだやろ?』
「まだやけど…」
『昼間話しよったラーメン屋、今から行かん?』
「今から?」
『奢るし』
「そんな、昼間も奢ってもらっとるし…いいよ」
『なん遠慮しようとや、子猿の癖に』
「なんてや!」
『あはは、子猿は直ぐ怒る、いいから気にすんな、遙んちどこら辺や?』
「……N町やけど…」
『そこの近くに郵便局あるやろ?』
「うん、あるよ」
『俺、今から出て来るけん、30分後にそこまで来て、ほんじゃ…』
「あっ、和久井君っ」
…ツー、ツー、ツー…
電話は切られてしまった。
坂口さんが連れて行ってくれたお店で、偶然にも久しぶりの再会をした私達。
地元を離れて約二ヶ月弱。
こっちには親しい友達なんかまだまだ出来てなくて、誰も出迎えてくれないアパートに帰って来る寂しさに、ちょっぴり実家の事が恋しくなってしまっていた私。
気取らず地元の言葉で話せる和久井君の存在が正直嬉しく、早速電話をかけてきてくれた事に喜びを隠しきれなかった。
あ、そうだ。
和久井君にもラーメン分けてやろ。
きっと喜ぶ筈。
段ボール箱からラーメンを数個取り出し、リュックに詰めてアパートを出た。