last.virgin
郵便局は歩いて約20分位の距離。
今朝歩いてアパートまで帰った、坂口さんのマンション近くにある。
坂口さんのマンション…
寝室が凄く広くて綺麗で、私のワンルーム、ユニットバスとは違って、トイレもお風呂とは別なんだろうな…
家賃も凄く高そう……。
……ピアス。
坂口さんの所で落としてしまって、私が付けていたもう片方のピアスに、坂口さんは私だと気付いてしまったみたい。
始めは給湯室でいきなり顔を掴まれて驚いたけど、私のピアス確認して見たんだよね?
お金も返すって言ってくれたてな…
遠くから見ているだけだった坂口さん……。
会社での坂口さんは凄くモテモテで、女性にだらしないのかと思ってたから、ホントは気遣いの出来る、きちんとした真面目な人で、それに意外と話もしやすくて、優しくて、誠実な人なんだと思って私は少し安心した。
だって、私の初めての相手が、とんでもなくタラシの遊び人だったりしたら、私の無くしてしまった物が、それほど大切な物じゃなく、軽い物のように感じてしまって、情けなくなってしまうから……。
初めての相手が、坂口さんみたいな人でよかった。
お金を返してくれながら、すまないって謝ってくれてた坂口さんは、ホントに申し訳無さそうな表情をしていて、無理矢理じゃなく、私のひとつ大人なる為の処女喪失計画に、酔った坂口さんを利用しただけだったのに、かえって私の方が申し訳無くなってしまった…
夕飯にも誘ってくれて……。
何もそこまで責任感じる事ないのに…
そんな事を考えながら、夜道をてくてくと、リュックを揺らしながら歩いていると目的の郵便局に到着。
携帯を出して時刻を確認すると、約束の時間10分前。
郵便ポストの横に立ち、読みかけの携帯小説でも読もうかと、携帯のブクマを開いて見ていると、目の前に車が横付けされて、和久井君かなと思って顔を上げて見ると、何だか見覚えのある車から降りて来たのは。
「坂口さん?」
「やっぱり…遙、何でこんな所に?」