last.virgin
「坂口修二君、重役出勤、お疲れ様です」
デスクに着くなり笑顔の英明からの嫌み攻撃。
「…じゃあ、平日に合コンなんか組むなよ、英ちゃん…」
椅子を引き英明の隣のデスクに腰掛け、頭を両手で抱えてデスクに肘をつく。
そんな俺の肩をガバッと掴んで、英明は俺の耳元で。
「…で?…どうだった?処女の味は?」
「なっ!…何言って!…っ…いってぇ…」
自分の声に脳みそを揺さぶられ、ガツンと激しく頭が痛んだ。
「あはは、その調子だとあんま覚えてないんだろ?」
「……うん。断片的にしか…」
「あ〜。勿体ね〜!」
………確かに…
ちょっと勿体ないかも…
酔っていたとは言え、断片的な記憶の中で彼女の身体は温かく、その手触りが微かに残っていて、出来ればもう一度会いたい。
なんて、不覚にも考えてしまって、慌てて頭を振る。
その動作にまた脳みそを揺さぶられ、再び頭を抱えた。
「…お前…何やってんの?」
呆れたように俺を見る英明。
「…いや何でも…さ、仕事仕事…」
鞄の中身をしまおうと、デスクの引き出しを開けてみると一枚の茶封筒。
…何だ?これ?
昨日はこんなの入ってなかったよな?
開けてみてみると中には一枚の一万円札と白い紙。
「……?」
紙を開いて見てみると。
『昨晩はシーツを汚してしまって大変申し訳ありませんでした
高級そうなシーツみたいだったみたいなので、一万円では足りないかも知れませんが、新しいのを購入して下さい』
細く今時珍しい手書きの綺麗な字でそう書かれていた。