last.virgin



「坂口修二君、重役出勤、お疲れ様です」



デスクに着くなり笑顔の英明からの嫌み攻撃。


「…じゃあ、平日に合コンなんか組むなよ、英ちゃん…」


椅子を引き英明の隣のデスクに腰掛け、頭を両手で抱えてデスクに肘をつく。


そんな俺の肩をガバッと掴んで、英明は俺の耳元で。


「…で?…どうだった?処女の味は?」


「なっ!…何言って!…っ…いってぇ…」


自分の声に脳みそを揺さぶられ、ガツンと激しく頭が痛んだ。


「あはは、その調子だとあんま覚えてないんだろ?」


「……うん。断片的にしか…」


「あ〜。勿体ね〜!」



………確かに…
ちょっと勿体ないかも…



酔っていたとは言え、断片的な記憶の中で彼女の身体は温かく、その手触りが微かに残っていて、出来ればもう一度会いたい。



なんて、不覚にも考えてしまって、慌てて頭を振る。



その動作にまた脳みそを揺さぶられ、再び頭を抱えた。


「…お前…何やってんの?」


呆れたように俺を見る英明。


「…いや何でも…さ、仕事仕事…」



鞄の中身をしまおうと、デスクの引き出しを開けてみると一枚の茶封筒。



…何だ?これ?
昨日はこんなの入ってなかったよな?



開けてみてみると中には一枚の一万円札と白い紙。



「……?」



紙を開いて見てみると。



『昨晩はシーツを汚してしまって大変申し訳ありませんでした


高級そうなシーツみたいだったみたいなので、一万円では足りないかも知れませんが、新しいのを購入して下さい』



細く今時珍しい手書きの綺麗な字でそう書かれていた。




< 5 / 115 >

この作品をシェア

pagetop