last.virgin
「坂口さんこそ…こんな所で…あ。マンションこの先でしたよね?あははは。私のアパートもこの近所なんです」
坂口さんの事を考えてここまで歩いて来たから、目の前に本人が現れて驚いてしまったけど、考えてみればこの辺りは坂口さんのテリトリー、単純に帰宅途中なんだよね?
「え?…近所なの?」
「はい。こっから徒歩20分位です」
坂口さんは車から離れて私の前までやって来て。
「会えてよかった…昨日の事…もっと詳しく聞きたかったから…時間大丈夫?よかったら飯でも…」
「昨日の事はもういいですよ…忘れて下さい」
「いや、そう言う訳にはいかない、君が俺をマンションまで送ってくれたのか?お願いだ、教えてくれ」
ホントに坂口さんって真面目な人やなぁ…
そんな綺麗な顔で、お願いだ、なんて言われたら仕方ない。
私は坂口さんをマンションまで送った経緯を、出来るだけ詳しく説明してあげた。
「……そこまで、酔ってたのか…俺は…」
坂口さんは片手で額を押さえ、うつ向いてしまった。
「はい、かなり酔ってました」
「………………」
私の一言でさらに項垂れてしまった坂口さん。
何でやろ?
「自分より小さな娘に担がれて帰るなんて…情けない…」
ああ。
それで落ち込んどる訳やね?
「大丈夫ですよ、私、力持ちですから、お米30キロだって担げます!えへへ」
「……30キロ…」
「はい!昼間も話しましたけど、うちの実家、農家ですから!」
私が元気よくそう答えると、坂口さんは伏せていた顔を上げて、顔の筋肉が緩んだみたいにプッと笑って、何やら小さく呟いた。
「……遙は、可愛くて、逞しくて、格好よくて…なんか…凄いよな…」
「え?…何がですか?」
「いや…何でも…それともうひとつ…」
「まだ何か?」
「…その…昼間、無理矢理じゃ、無かったって言ってたのが、どうしても気になって…俺がその…君の初めてを…」