last.virgin
肩から下がダラリとなってしまっている坂口さんは、額に汗までかいていて、かなり辛そうな様子。
「坂口さん、病気行きましょ?」
「いや、大丈夫だ…それより早く警察に…」
坂口さんは携帯を取り出し画面を開き、今にも警察に電話をしようとしていて、私は慌てて坂口さんから携帯を取り上げた。
「何する?せっかく遙が取り押さえたのに、早くしないとあいつ逃げるぞ?」
「すみません、坂口さん…あの人…和久井君なんです…」
「は?……和久井って…昼間の?」
「……はい」
私は坂口さんを促し和久井君の元へと再び向かう、和久井君は地面にあぐらをかいていて、私達をじっと見ていた。
「和久井君!坂口さんに謝って!」
「は?…何でや?俺、悪く無いやろ?」
「悪いっ!バイクで走りながら蹴るなんて、立派な犯罪だよっ!一歩間違えば大怪我するよ?」
「……俺だって…一歩間違えば死んどったぞ?」
「それはっ…あんないきなり襲われたら、誰だって暴漢かと思うやろ?」
「俺だって遙が痴漢に襲われとると思ったんや!」
「だからって、蹴ること無いやろ?!」
「あん時は咄嗟にそれしか思い付かんかったんや!」
「やり過ぎやろ?!和久井の馬鹿っ!!」
「なんてや!」
「ちょっ!二人とも!落ち着いてっ!」
「「はあっ?!!」」
勢いに任せて、和久井君と一緒に坂口さんをギロリと睨んでしまった。
私ったら何やってんの!
私の馬鹿っ!!
とりあえず坂口さんの言うように落ち着こう……。
「…坂口さん…実はですね…」
私は坂口さんに和久井君とここで待ち合わせをしていて、坂口さんを痴漢と間違えて坂口さんを襲ってしまったんだと言う事を説明した。