last.virgin
左肩関節脱臼。
坂口さんは倒れた拍子に酷く肩をアスファルトにぶつけてしまったみたいで、肩の関節が外れてしまったらしく、処置室から出て来た坂口さんは巻軸帯で首から腕を吊るされてしまっていた。
骨折じゃなくてよかったけど、脱臼だって暫くは安静にして、きちんと治さないと脱臼はまた繰り返す恐れがある。
夜間の受付で坂口さんの代わりに会計を済ませてあげて、緊急外来の待合室の長椅子で、座って私を待つ坂口さんの元へと急いだ。
「お待たせしました、坂口さん」
「……迷惑…かけたね」
「いえっ、迷惑なんかじゃ無いです…ホントに…ごめんなさい…」
「何で謝る?…君は何にも悪く無いだろ?」
「……でも、原因は私にありますから…立てますか?肩、貸しましょうか?」
「いや、一人で立てるよ、怪我してるのは肩だし…昨日に続いて今日までも、女の子に担がれて帰るなんて…情けなさ過ぎるだろ?」
「そんな事無いです…それにさっきも言いましたけど、私、力持ちですから」
ははは、と、力無く笑う坂口さんと病院を出て、坂口さんの車を停めてある駐車場に向かいながら。
「明日…仕事…大丈夫ですか?」
「…ん〜…何とかなるだろ?」
……何とか出来るんだろうか?
パソコンだって片手じゃ扱いにくいだろうし…
坂口さんも一人暮らしみたいだし…
食事は?お風呂は?掃除は?洗濯は?
そう考え出したらキリがなくて、私は益々坂口さんに対して、申し訳無さで一杯になってしまった。