last.virgin
「……坂口さんはアメリカ人…日本人なのに…アメリカ人……」
バンドルを握る彼女の横顔をチラリと見てみると、何やらブツブツと呟きながら何か考え込んでいる様子。
「坂口さん…」
徐に彼女が口を開いた。
「私、坂口さんの怪我が治るまで、坂口さんのお世話をします」
「は?」
「だって、誰もお世話してくれる人、居ないんですよね?」
「…まあ、そうだけど」
「だったら私に坂口さんのお世話させて下さい」
「え?……」
「そんな腕じゃ、何にも出来ないでしょ?着替えや炊事や、お風呂だって…」
「……何とか…出来るだろ…」
「いいえ、きっと無理です」
「………………」
キッパリとそう言い切る彼女に逆らえる言葉が見当たらない。
「坂口さんがよければ、ですけど、私を暫く坂口さんのマンションに置いて下さい」
「………置くって…」
「玄関先でも、廊下でも、ベランダでだって構いません、寝袋だって持参します!」
「ね…寝袋?」
「私のせいで怪我をさせてしまったんですから、私にはお世話をする義務があります!」
「……それって…俺の家に寝泊まりして…俺の身の回りの世話をしてくれるって事?」
「勿論です。ご迷惑ですか?」
今まで女なんて家に上げた事すら無かった。
彼女面されて押し掛けられたり、自分の生活を乱されるのが嫌だった。
もて余した性欲を吐き出す位にしか女には期待していなかった。
それが俺の価値観だと思っていたのに……。
「迷惑じゃないよ…遙…」
もう既に手遅れどころか、たった一日で、完全に彼女に参ってしまっている。