last.virgin
−−ガタッ!
勢いよく椅子から立ち上がり、その拍子に椅子が倒れてしまった。
瞬間。フロア内の注目を集めてしまった俺。
「何?お前?どうかした?吐く?」
英明が心配気に下から俺を見上げてきた。
「…いや、大丈夫」
椅子を戻して再び座り直し、キョロキョロと辺を見回す。
…何だよこれ。
俺のデスクを知ってるって事は、同じ会社の娘じゃん。
いったい誰だよ?
名前位書いとけよ……
広々としたビルの五階のワンフロア全体が、幾つかのデスクで仕切られていて、各部署に隔てられいるこの会社。
上の六階までが同じ会社で六階は重役の個室、会議室、資料室、給湯室、休憩室等かある。
五階にも給湯室と休憩室があり、俺達が利用するのは主にこっち。
見知らぬ彼女に苛立ちを覚え、そのまま仕事に取り掛かる気にもなれず、握りしめてクシャクシャになった手紙を封筒ごとポケットに突っ込んだ。
「…ちょっと、コーヒー入れてくる」
英明にそう言い残し、立ち上がり給湯室へと向かう。
「俺の分もな?」
「…うん」
わざと遠回りして経理部のデスクの並びに足を進める。
「あ。坂口さん、おはようございます」
ちょっとギャルが入った里奈ちゃんが、今日もパッチリ目力メイクで笑顔で挨拶してきた。
「ああ、おはよう、昨日はお疲れ…」
言いながら若い女の子が多い経理部のデスクを見渡す。
「坂口さん、飲みすぎですよ?遅刻しちゃダメじゃないですか」
「あはは、そうだね?俺ももう歳かな?」
どうでもいいやり取りをしながら、経理の女の子達を見てみるけど、やっぱり誰かはわからない。
「あはは♪何言ってるんですか?坂口さんまだ27じゃないですか?」
「今年で28、アラサーだよ」