last.virgin
「とりあえずジャケット、脱いで下さい、早くしないとシミになりますから」
言われた通りにジャケットを脱ぐと、遙は袖の部分を水道で洗い流し始めた。
「…すみません、また汚してしまいました…」
何やら遙が呟いたけど、水道の音で良く聞き取れず…
「…え?…何?」
「いえっ!何でもっ」
ジャケットを流し終わると今度はハンカチを濡らして、俺のシャツの袖をトントンと拭き始めた遙。
「よかった…こっちはそれほどでも無いですね?火傷とかは無いですか?」
「うん。火傷は無いよ…あのさ?そこまでしなくても大丈夫だから…」
チビのクセに必死にシミを落とそうとしている遙の頭を見下ろしていると、何だか可哀想になってきた。
「坂口さんの着てる物って高級そうですから、シミなんて付けたら大変です…」
「はは、そんなに高級品じゃないよ、セットで七万位だし…」
「七万っ?うちの家賃と同じ…やっぱり高級品ですね…」
……なんか調子狂う娘だな…
早くこの場から立ち去ろう…
「ありがと、遙ちゃん、もういいよ……」
遙を退かす為にその肩に手を伸ばそうとした瞬間、俺の目に飛び込んできたのは遙の左耳。
ピンクサファイアのハートのピアス。
思わず両手で遙の肩をガバッと掴んでしまった。
「お前だったのかっ?!」