雪花狂乱〜不良少女は秘密をもつ〜
「帰ったんじゃないんですか、凪さん」
「好きな女が男に連れて行かれるのを見て放っておくほど、俺は冷徹にはなれないからな」
「……………」
「悪かった」
「……………」
「無視して悪かった」
「……………」
「だから、もう、泣きやめ」
「っ……」
そっと、壊れ物を扱うかのように、抱きしめられる。
数ヶ月ぶりの、凪さんの温もり。
「無視、やだなんです…」
「うん、」
「あたし、凪さんが好きなんです…」
「うん、」
「敵だとしても、好きなんです…」
「うん、俺もだ」
凪さんの温もりは、雪兄とは違う。
どんなにかっこ良くったっても、どんなに頼れる人でも、雪兄はお兄ちゃんなんだ。