cloud×cloud【完】
「ほらほらできましたよ~」
そう言いながら奥の部屋からでてきた主人と桜。
「旦那、こんな感じでどうでしょう?」
ヘラヘラと笑いながら客の機嫌をとる主人の声が耳を通ってすり抜ける。
それほど俺は目の前にある美しさに見とれてしまっていた。
髪は高い位置で団子結びで、顔はいつもと違い化粧がほどこされていて、紺の浴衣がよく映える。
初めて女の桜を見た。
いつもは袴を着ているためか、ガラリと雰囲気が変わる。
誰にも渡したくない、ついそう思ってしまった自分に気づく。
俺は一体、どうしたいのだろうか。
「桜、すっげえ綺麗だ。」
俺がそう言うと、桜は顔を赤に染めて「ありがとうございます」と呟いた。