cloud×cloud【完】
カラン、コロンと下駄の音が路地にやけに響く。
浴衣は袴と違って少し歩きにくい。
化粧もあまり好きではないが、久しぶりの『女』になって気分は悪くない。
その時、少し遠くの方で高い乾いた音が鳴り、
次の瞬間、そらに光が散らばった。
「うわぁ…花火…」
現代のものほど盛大にとはいかないけど、
確かに暗闇の中で美しく輝いた。
「花火綺麗だろ?」
次々と打ち上げられる花火に私たちは光に包まれる。
「江戸の花火はもっとすごいんだぜ!?
毎年、隅田川で花火があがるんだ…。」
一見、無邪気に楽しそうに話す左之さんだが
どこか悲しげだった。