cloud×cloud【完】
「総司、何を急いている?」
一君は知らない。
病魔が僕を蝕んでいることを、
それが死病であることも。
「なんにも。」
一君の問いに僕はそっけなくそう答えた。
そう、何も急いではいない。
ただ、強くなりたいと思っているだけ。
僕は木刀の矛先を彼に向けた。
「来なよ、一君。」
君にはわからないだろう。
僕のこの思いが。
わかるはずもないだろう。
目に見える自分自身の衰えへの恐怖が。
一君は一瞬ためらいの素振りを見せたが、壁に掛けられていた木刀を手にとった。