Black Queen【1】
「こっち来い」
一膳は顎を二回ほど右に動かし後ろを向いて歩きだした。
奏は急いで一膳についていった。
周りからは痛い視線がヒシヒシと伝わってくる。
ようやく一膳が一番奥にある扉の部屋に入った。続いて一緒に入る。
「んで、わざわざ敵の溜まり場まで来て何のようだ?奏」
一膳は煙草を一本とりだし、火をつけずにジッとこちらを見てきた。
「…一膳なんで今回闇龍に喧嘩を売ってきた?」
「さぁ?頭に聞いてくれよ?」
「頭?もう分かってんだよ。副が泰なら一膳…お前が頭なんだろ」
一膳は、それを聞いてハッと笑った。
「なんだ分かってたのか?」
「あったりめぇだ!」
俺が怒鳴ると、一膳は少し笑って煙草にやっと火をつけた。
「すぅー…はぁー…、」
煙草の白い煙が部屋に充満する。
一膳は、何度か吸って灰皿に吸殻を捨てた。
そして俺から視線を外し窓の外を見て
「加那は知ってるのか?」
と言った。
「あ?…俺しかまだ知らねぇよ」
「そうか…」