思い出はあなたの中に
「くそ!」

もたもたしている間にもオレの体は虫に浸食されていく。

目、口、耳

穴という穴から虫が侵入してくる。

外だけでなく内部からも虫に食われていくのをオレは感じた。

胃からこみ上げてきたものをオレは吐き出した。

口から出たそれはドロドロの胃液を浴びた虫だった。

嫌だ

助けてくれ…!

必死で登ろうとするがオレの思いとは裏腹に、もがけばもがくほど壁はぼろぼろと崩れるばかりだった。

「無駄よ」

上から声が聞こえた。

「ヒトミ!」

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