たった一人の親友へ〜another story〜
コンビニまでの距離


約五分間


俺とさなは会話もせず


ただただコンビニを目指して歩いた


つながれている手だけに全身の熱が注がれて


何だか泣きそうだった


一通り頼まれたものを買って、コンビニを出ようとしたさなの手を再び掴み


行きとは違う道を行く


俺の異変に気がついたのか、さなは初めて俺に対して声をあげた


「ちょっと。ねぇ!翔。道間違ってるよ。ねぇ。」


手を無理矢理放そうとするさなの小さな抵抗をよそに


俺はさらにつながれている手に力を入れ


中学の頃よく遊んだ公園の入り口へと向かう




さなの肩を無理矢理おしてベンチに座らせた


「意味わかんないよ。翔・・ねぇ。」


明らかに苛立ちともとれるさなのその声に


何度もリハーサルしていた言葉は


もろくも記憶の彼方にとんでいった


後悔しても遅い


大きく息を吸った俺は


いつの間にか彼女に対してこう叫んでいた






「意味分かんねぇのはこっちだよ!!」

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