たった一人の親友へ〜another story〜
「翔は何でも持ってていいね。」


放課後ささいな喧嘩でゆいに言われた一言


俺が後輩の女の子と仲良さそうに話していたのが気に入らなかったのか


少し苛立った口調で言われた




俺自身ちょっと調子にのってたのかもしれない


ゆいと俺はお互い分かり合ってるなんて勝手に思っていたから




「何が?」


「分かんないならいいよ。
好きにすれば。」


そういい残して俺の前から立ち去るゆい


「ちょっと待てよ。」


それでも行こうとするゆいの手を強く掴んだ


「ちょっと」


小さな抵抗さえも今の俺にとっては苛立ちに変わるだけで


気がつくと頭に血が上って、ゆいを壁に押し付けてた



「翔。やめてよ。
翔!」


目にいっぱい涙を溜めて


傷つけていることなんて目に見えてるのに


その時の俺には考える余裕なんてなかった




無理矢理キスをして


服の中に手をいれた


もう何度も行ってる行為なのに


この時以上に空しかったことはないかもしれない




すぐそこで泣き声が聞こえるのに


心がつぶれた音がするのに


俺にはどうすればいいのか分からなかったんだ
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