たった一人の親友へ〜another story〜
ゆいが家に来て


トイレで部屋を空けた時


ふと目に入ったゆいの携帯


だめだ、と意識したときにはもう携帯を手にとっていた


着信履歴を見ると所々に例の友達の名前が出てきて


メールを見ると


毎日のようにやり取りされていた


手が震えて


メールの中身を見る気にもなれなかった




ガチャッとドアのノブが回される音が聞こえる


「何してんの?」


ゆいの大きな声が頭に響いた


余裕なんてなかった


息をするのも苦しかった




ゆいが俺の手から乱暴に自分の携帯を取り上げた瞬間


何だか無性に笑えてきたんだ


自分の無力さに


何より


俺自身


何にも分かってなかったんだって気付いた瞬間


ずっと


抑え続けていた気持ちが溢れ出してきた
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