たった一人の親友へ〜another story〜
「何焦ってんの?
何かやましいことでもあるわけ?」


無言のゆい


せめて言い訳でも何でもしてくれよ


全部なかったことにするから


「なぁ。ゆい答えろよ!」


「ごめ…なさい」




案外あっさり認めるんだ、とか


浮気っていう言葉とか


こんなもんか、とか


悲しさより


諦めって感じで


一回の過ちくらいって言うけど


俺にとってそれは大きな


大きな


一回だった




「別れよう」




もう何も聞きたくなかった


出来るならば


少しでも良い思い出で残しておきたかったから




「やだよ
別れたくない」




泣きながら訴えるゆいを片手で突き放した


「もう無理だよ。
ごめんな。
今までありがとう」



ゆいが小走りで事務所を出ていく音が聞こえた




肩まで延びた綺麗な髪


大きなくりっとした目


小さい唇


何にもかもが愛おしかった





今になってとめどなく流れる涙を


俺には止めることができなかったんだ
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