たった一人の親友へ〜another story〜
数週間前


ずっと欲しかったバイクを先輩から安く譲り受けた


前にさなが言ってた


“好きな人のバイクの後ろに乗れたら、最高に幸せだなぁ”って


もうずっと昔のことだから


言った本人でさえ忘れてるかもしれない


でも俺は


忘れなかった


忘れることができなかった


当時、俺はさなに片思いしてて


さなから発せられた“好きな人”という言葉に


無意識に嫉妬してたから


いつか現れる誰かの


俺以外の誰かのものになるさなの姿を見るのが


耐えられなかったから




あれから数年がたって


俺は結局何を手にすることができたんだろう




さなのためにバイクまで用意して


彼女のために


彼女のことを想ってヘルメットまで用意して




“好きな人”


その響きに夢を見てるのかな


浅はかで


とてつもなく滑稽な夢を
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