たった一人の親友へ〜another story〜
働かない頭で必死に考えた


母さんが重体


何で?




意味もない問いかけが俺の頭を駆け巡る


答えはそこに行かなくちゃないのに


どうしたって身体がいうことをきかなかった






やっとの思いでジーンズと真新しいTシャツに袖を通し


家を出た




母さんが重体だっていうのに


一刻を争う事態なのに


どうしても現実を見たくなかったんだ




どうして?母さん


あの日の電話をふと思い出す


あれは母さんのSOSだったのか


俺に対する警告だったのか




病院のフロントに母の名前を伝える


看護婦は淡々と手続きの説明をし


母のいるところへと案内してくれた




目の前にICUの文字


たくさんのチューブにつながれた母親


目の前にいる人間が母だと信じたくなかった


同姓同名の誰かだと


そうでもしなくちゃ潰れそうだったから


心が


からだが


自分自身全てが


壊れてしまいそうだったんだ
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