たった一人の親友へ〜another story〜
「単刀直入に言うよ。」


小さい小部屋の椅子に座ったとたん


田中医師はこう言った


「はい・・・。」


まだ受け入れる体勢なんて整っていなかったのに


そう言わざるを得なかった


「君のお母さんは自分で手首を切ったんだ。
多分衝動的にね。
だから幸いそこまで傷は深くはないよ。
でも油断はできない。
未だに意識が戻らないから。
そればっかりは自分自身で頑張ってもらうしかないんだ」


やけに冷静に頭が働いていた


「母は自殺未遂ってことですか?」


「そうなるね。
きっと心に何か問題を抱えてたんじゃないかな?
何か心あたりはある?」


どう答えていいか迷った


全てを打ち明けていいものか


「僕と義理の父の間がうまくいっていませんでした。
思い当たることはそれくらいです。」


「そうか。
とにかく今日、明日が山場になるから。
もしできればでいいんだけど。
お父さんとどうにか連絡をとってほしい。
君に頼むのが酷だということは分かってる。
でも君だけじゃ手に負えない問題もあるんだ。
どうか頼むよ」


「・・・・。
はい。それじゃぁなんとか」



俺の答えを聞いた医師はそれに満足したのか


にっこりと笑顔を作り


「お母さんの傍にいてあげなさい。」と一言残して


小部屋を後にした
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