たった一人の親友へ〜another story〜
病院に着いた時には全身汗びっしょりで


そんなことなんて気にならないくらい、早く母の顔を見て安心したかった


母の病室を開ける瞬間


また鼻の奥がツンとなって


泣きそうになるのを必死でこらえた




扉を開けた瞬間


義父が母の手を握って泣いている姿が見えた




一歩ずつ近づく


この数歩がどれだけ遠く感じられたか



母さんは俺に視線を移すと


驚いたように目を大きく見開き


ぶわっと瞳から涙を流して


いつものように


ごめんね、と


泣いたんだ





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