たった一人の親友へ〜another story〜
「そんなこといいから。
大丈夫?
どこか痛くない?」


何度もうなずく母親が何だか子供みたいで


俺もふいに笑顔になって母の手をぎゅっと握りしめた


「よかった。
心配したんだから。」


義父は俺達二人を気づかってか


少し頭を冷やしてくるよ、と言って


病室を出て行った




「翔。
お母さんまたあなたに迷惑かけちゃったね。
ごめんね。
本当にごめんなさい。」


「そんなことないって。
謝るのはこっちの方だよ、母さん。
俺ずっと母さんに迷惑ばっかかけて。」


「ううん。
違うの。
本当にだめね、あたし。
こんな時まで中途半端になって、死に切れないんだから」


だめだ


泣きそう


「そんなこと言うなよ。
お願いだよ、母さん。
母さんが死んだら俺どうすればいいんだよ。
俺の唯一の家族なのに。
俺小さい頃言ったじゃん。
母さんのことは俺が守るって。
まだあの約束有効だろ?
だからお願いだよ。
そんな死ぬとか簡単に言うなよ。」


母の前で初めて見せた涙


母はそんな俺の姿を見て


またごめんね、と一言謝り


俺の手をぎゅっと


力強く握った



< 163 / 220 >

この作品をシェア

pagetop