たった一人の親友へ〜another story〜
道しるべ
母親は一週間後に退院し


俺は今までとは何ら変わりない生活を送っていた


結局俺はゆいにもさなにも他の友達にも


母親の自殺未遂のことは言わなかった


別に知られるのが嫌だ、とかそんなんじゃないけど


無駄に心配させて、迷惑かけたくなかったんだ




それでもさなは俺に何かあったってことは感づいてたみたいで


毎日何だかんだで俺のことを気にかけてくれた






あんなことがあったから弱ってんのかな、俺


無性にさなに会いたくなった


塾が終わった帰り道


手土産を持ってさなの家に寄った


さなは相変わらずの笑顔で俺を迎えてくれて


肉まんごときですんごい嬉しそうな顔して


本当にさなを見てると幸せな気持ちになるんだよな




「あがってけば?」


そんなこと言われて心が揺らいだけど


今さなと話したら


自分が弱音を吐いちゃいそうで


今まで耐えてきた意味がなくなってしまうから


心底残念に思いながらその誘いは断った




「じゃぁね」


そう言って笑顔で手を振ってくれるさなは


どんな薬よりも俺を元気にさせてくれる


そんな魔法なんだ
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