たった一人の親友へ〜another story〜
「サンキュ」


けんたにケータイを返し、全速力で事務所までの道を急いだ


待ってる一分が何時間にも感じられて


玄関のチャイムが鳴った時


安堵感で思わず顔がにやけた


ドアを開けると


今にも泣きそうな顔をしたさながいて


ただ愛しさがこみあげてきて


抱きしめたいという衝動にかられる自分をどうにか抑えた


「入って」


ちょっとぶっきらぼうに言ったのは


ただの格好つけ


ソファーに座ったさなに、俺は問いかけた


「何で俺のこと避けてた?」


俺の顔色を伺うようにさなは俺をちらっと見た


「黙ってないで何とか言えよ。」


重い空気に耐えれなくて思わずどなってしまう


びくっと身体を震わせたさなは


俺をじっと見つめ


やがて決心したように話しはじめた


「愛子ちゃんが…」
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