たった一人の親友へ〜another story〜
30分かかるさなの家までの道のりを


全速力で走った


何で自分がこんなに急いでいるのかも


どうしてこんなにさなのことが心配なのかも


もう何もかもどうでもよかった


ただたださなの顔が見たくて


きっと今頃一人で泣いているさなを


俺が


この手で抱きしめてやりたかったんだ




家に着いた途端


玄関先に一人で俯くさなが視界に入った


「さな!」


びくっと顔をあげたさなは


俺を見て安心したのか


大きな声をあげて泣き出した


「何泣いてんだよ」


照れ隠しに彼女のおでこをこつんと小突いて


俺はありったけの力で彼女を抱きしめたんだ
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