たった一人の親友へ〜another story〜
「隆也と別れたの」


どのくらいたっただろう


ようやく落ち着いた彼女の口からそう告げられた


「え?何で?」


正直な感想


分からない、というように大きく首をふるさなの目からは


また大きな涙の粒が溢れ出した


「ふられちゃった」


無理に笑おうとするさなが痛々しくて


もっと強い力で抱きしめた


「翔…
ごめんね。ありがとう」






そんな言葉俺にはもったいないよ


正直さ


俺はさなが先輩と別れたって聞いて


嬉しかったから


またさなが自分のところに戻って来てくれる気がして


それと同時に


こんなにさなが泣いていることに胸を痛める自分もいたんだ


さなにとって先輩はそんなに大事な存在だったんだと


思い知らされたから
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