たった一人の親友へ〜another story〜
卒業―別れ―
卒業式当日


今日この日


自分が皆と離れ離れになるなんて実感は


まだ一ミリたりとも現れてなかった







事務所に一本の電話が鳴った


母親からだった


出るのをかなりためらった俺だけど


それでもほんの少しの期待を胸にこめて


電話に手を伸ばしたんだ


「もしもし、翔?」


「うん。何?どうしたの?」


「あっ。今日卒業式でしょ?お母さん行くからね。
ちゃんと用意した?」


「えっ?来んの?」


「当たり前じゃない。
大事な息子の卒業式なんだから」




一瞬次の言葉に詰まった


まさか母親がそんなこと言うなんて


夢にも思っていなかったから


「あぁ。サンキュ」


「うん。じゃぁまた後でね」





ツーツーツーツー






自然と顔に笑みがこぼれる


それと同時に


頭の片隅に義父の顔がちらついた


義父は来るのだろうか


まさかな




こんな小さな不安をどうにか消し去り


俺は学校へと向かった
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