たった一人の親友へ〜another story〜
「ごめんな、翔」


短い


でも重い言葉だった


何も言えなかった


きっと父親だけが悪いんじゃない


母親だって


俺だって


何を責めたらいいのか分からないんだ




「なぁ、翔。
一度だけ会いたい。
だめかな?」




すぐにでもうん、と言いたかった


望んでいたものがすぐ目の前にあるんだから


「でも…」


この時ばかりは正直に言えない自分を恨んだ


「父さんな、今駅前の公園にいるんだ。
昔翔とよく来ただろ?」


「…。」


「父さんそこで待ってるから。」


「…。」


「もしよかったら来てくれないか?」


「…。」


「じゃぁな」


そこで電話は切れた


空しい機会音が身体中に響いている


心臓が張り裂けそうに鳴っているのが分かった


身体中が震えているのも分かった


汗がどっと出る




「翔?」


しばらく放心状態だった俺は


さなの一言で我にかえった
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