たった一人の親友へ〜another story〜
母は取り乱すこともなく


いたって冷静に


まるでそれが当たり前かのように


「産みます」と


そうはっきり言ったそうだ


「俺はさ、あの時本当に情けないけど…戸惑った。まだお互い大学だって卒業してないし、将来なんて考えられるほど大人でもなかったし…
正直どうしていいか分からなかったんだよ」




母さんは一体どんな想いをして


俺を産もうと思ったのだろう


一流大学という肩書きまで捨てた母に


俺は何を与えてあげられたんだろうか






「どうして母さんと結婚しようと思ったの?」


その問いに優しく父は微笑んだ


「検診で病院に行った時に、お腹の中にいる赤ん坊の写真を見て思ったんだ。この子は生きてるんだって。俺の子供なんだって。
涙が出たよ。
守りたいって心の底から思った。この子とお前の母さんを。」
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