たった一人の親友へ〜another story〜
「俺達離れた方がいい」


そう母に告げた父


母は必死にそれを止めようとした




「辛かったし、苦しかったよ。今までお前たちだけが支えだったんだから。
でもな、こんなふうに落ちぶれていく自分自身が情けなさすぎて、こんな姿母さんに見られたくなかったんだ。この期に及んで、プライドなんて気にしてさ。
最低な父親だったよ。」


なにも言えなかった


なにを言っていいのかも分からなかった


「俺は家族を捨てたんだ。お前に恨まれているのも分かってる。母さんが俺のことを悪く言うのも分かってる。でもこの十年間、やっぱり俺はお前たちがいたから頑張ってこれたんだよ。」




静かな公園に父の声だけが響いていた




母も父も


幼過ぎたんだ


だって俺は知ってるよ


母さんは何か悲しいことがあると


いつも昔三人で撮った写真を見てた


どれだけ口では父さんのことを悪く言っても


やっぱり父さんは


母さんにとって


大切な存在なんだって


俺は知ってるよ
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