たった一人の親友へ〜another story〜
「新しい父親とは仲良くやってるか?」


ふいに義父の顔が浮かんだ


思い出すだけでも胃がむせ返りそうだ


「普通だよ」


「…。
そうか」


そう言う父の横顔を見て


心が痛んだ


ふいに出そうになった言葉


“俺の父さんは父さんだけだよ”


でも


ぐっとこらえた


今言ってしまったら


今まで堪えてきた10年間に何の意味があったんだろう、なんて考えてしまったから




静まり返った公園




「なぁ翔。翔がどう思っていても、父さんはずっと翔の父親だからな」




小さい頃ずっと夢見てた


父という存在を確かなものにすること




「さぁもぉ帰るか。母さんも心配するだろ?」




本当は


本当はさ


話したいことなんてもっともっと山ほどあったよ


聞いてほしいことだって


相談したいことだって


ただ素直になる勇気がなくて


父の背中を見ながら


寂しい気持ちでいっぱいになってる自分に気付いたんだ
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