たった一人の親友へ〜another story〜
「今日は来てくれてありがとう。嬉しかったよ」


「うん」


「それじゃぁ元気でな」


小さくなっていく父の背中


“後悔しないで”


ふいにさなの言葉を思い出した




「父さん!」




気がついたら叫んでた


「俺も!
俺も父さんに会えて嬉しかったよ!
後…」




涙が邪魔して言葉が続かない




「父さんは…
ずっと俺の父さんだから!」




父は振り返らなかった


代わりに大きく手を振り


最後の相槌をうった




父の大きな背中を見ながら


涙をふく


そこにはやっと10年越しの思いを伝えられた気がして


父の笑顔を思い出しながら


清々しい気持ちで帰路へと着く自分がいた
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