たった一人の親友へ〜another story〜
家に着くと


さなが笑顔で迎えてくれた


この時ばかりはさ


素直になれる自分がいて


さなを


強くぎゅっと


抱きしめた


「翔…
よく頑張ったね…」


少し涙声になるさなを


本当に


本当に愛しいと思った




卒業式と同時に最後にしようと思ったのに


この気持ちを封印するなんて、今更ながら無理なことのように思えた




「ごめんな」




「何が?」


不思議そうに俺を見つめるさな


「何でもないよ」


「何それー」




こんなに近くにいるのに


どうして俺達は恋人同士になれないんだろう


俺の腕の中にいる彼女がすごく遠い存在に思えて


少しさなを抱きしめる腕を強めてしまったのは


俺のささやかなわがままだったんだよ
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