たった一人の親友へ〜another story〜
「さな!」




小さな肩がびくっと震える



俺はただ一点


その場所だけを目指して歩いた


さなは決して後ろを振り向かない




「さな…」






長い長い沈黙だった


「どうして?」


喉の奥から搾り取ったような震えた声


「どうして翔がここにいるの?」


背を向けているさなの肩が震える


「心配したんだから。
帰ろう。さな」


さなの腕を掴んだその瞬間


強い力で手を振りほどかれた


「さな?」


いい加減少し苛々していた俺は、さなの腕を強く掴んでこっちを向かせる


「やっ…」


勢いよく下を向くさな




彼女の顔を見て愕然とした


「何があったんだよ?」



目から下が青く腫れ上がっていた


手には無数の傷


さなは大粒の涙をこぼしながら、今日初めて俺の目を見て


その場に倒れ込んだ
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